ローカルNGO・政策担当者向けのトレーニング
こちらで既に報告しました通り、10月1日からJICA草の根技術協力事業(パートナー型)「インドネシアの都市部住宅密集地域における住民参加型コミュニティ排水処理システム普及促進事業」が始まっています。
今回の事業では、中部ジャワ州のテガール市、プカロンガン市、スラカルタ(ソロ)市、バリ州のタバナン県の4地区にコミュニティ排水処理モデルシステムを設置する予定です。どの地域もPUSTEKLIM(排水処理適正技術センター)のあるジョクジャカルタからは離れているため、3つのローカルNGOが、コミュニティの住民やローカル政府機関との調整役などを務めます。プカロンガン、テガールは近郊のスマラン市のNGO、スラカルタは同じスラカルタ市内のNGO、タバナン県は近郊のデンパサール市のNGOがそれぞれ担当します。
11月15日~17日には、ジョクジャカルタに以上の4つの都市などの各省庁担当者、3つのローカルNGOの担当者を招いて、トレーニングを行いました。このトレーニングは、それらの事業に参加する方々とPUSTEKLIMのメンバーが一堂に介して、今回の事業の意義や計画、それぞれの地域の状況や各NGOの経験を共有する、キックオフミーティング的な性格を持つものです。

トレーニング会場の様子(各ローカルNGO、各都市の担当者ら22名の他、PUSTEKLIMのメンバー6名が参加)
また、このトレーニングでは、中央政府から国家開発企画庁の住宅・居住総局ディレクターであり、水供給と衛生改善にかかわる国家レベルのワーキンググループ議長でもあるヌグロホ氏をお招きし、インドネシアの衛生問題にかかわる現況とその改善計画などに関してもご講演いただきました。

国家開発企画庁のヌグロホ氏による講演
1日目と2日目は主に会議室での講演が中心でした。その中でPUSTEKLIM側からは、今回の事業の概要やPUSTEKLIMがこれまでの事業で開発してきたコミュニティ排水処理システムについて、さらに同システムの技術面でのポイントや、住民参加型排水処理システムの形成にあたって発生した問題や取られた対応策などに関して、報告を行いました。各ローカルNGOからは、各団体の概要やこれまでの活動内容やそれらの活動から学んだことなどの報告があり、各都市の政策担当者からは各都市の概要及び衛生設備などの状況、今後の改善計画などについての報告がありました。3日目の午前中は先の事業で設置されたクリチャック地区とスクナン地区の排水処理システムの視察、午後には今後事業をどのように進めていくか、資金負担に関してなどを話しあう議論が行われました。

コミュニティ排水処理設備視察の様子(左:クリチャック地区、右:スクナン地区)
各都市の担当者は、嫌気性処理しか選択肢がないが、嫌気性処理でおよそ100世帯の生活排水を処理するのに必要な土地(約100~200平方メートル)がなかなか見つからないと発表していました。さらに、排水処理システムのための土地が見つからなくて、計画が挫折する場合もあるそうです。PUSTEKLIMの技術であれば、嫌気性処理のみの排水処理システムと比べておよそ5分の1以下の面積で排水処理システムを構築することが出来るので、PUSTEKLIMの技術は、特に都市部の住宅密集地域には適したものではないかと思われました。
さらに、PUSTEKLIMの技術担当者ヘルマン氏の発表によれば、嫌気性処理のみではBOD(水質汚濁の状況を示す一つの指標、値が低いほうがよりきれいな水質)を100ppm程度までしか下げられないが、PUSTEKLIMの技術では20~50ppm程度まで下げられるとのこと。今の国全体の排水基準では、BODに関しては100ppmであり、多くの地域も100ppmとしているが、幾つかの地域では基準を80ppmに下げている所もあるそうです。このような地域は今後増えると予想され、また排水基準もさらに下げられる可能性があり、そうすると嫌気性処理だけでは基準を満たさなくなる可能性もあるとのことです。
先の事業で開発された嫌気性処理と好気性処理の組み合わせによる住民参加型排水処理システムの有効性を実証し、もう一つの選択肢を提唱する価値は十分にあるようです。
その他、個人的にはローカルNGOの方が「1軒の家に1つトイレがあっても、1軒に2~3世帯住んでいて朝などはトイレが混むため、結局、川で用を足す人がいる」とおっしゃっていたのが、印象に残りました。
なお、APEXでは今週末の12月3日(土)に、東北大学の原田秀樹研究室との共催で「アジア地域に適合的な生活排水処理技術の新しい展開」というワークショップを開催しますので、ご関心のある方は是非ご参加ください。
(APEX彦坂)
今回の事業では、中部ジャワ州のテガール市、プカロンガン市、スラカルタ(ソロ)市、バリ州のタバナン県の4地区にコミュニティ排水処理モデルシステムを設置する予定です。どの地域もPUSTEKLIM(排水処理適正技術センター)のあるジョクジャカルタからは離れているため、3つのローカルNGOが、コミュニティの住民やローカル政府機関との調整役などを務めます。プカロンガン、テガールは近郊のスマラン市のNGO、スラカルタは同じスラカルタ市内のNGO、タバナン県は近郊のデンパサール市のNGOがそれぞれ担当します。
11月15日~17日には、ジョクジャカルタに以上の4つの都市などの各省庁担当者、3つのローカルNGOの担当者を招いて、トレーニングを行いました。このトレーニングは、それらの事業に参加する方々とPUSTEKLIMのメンバーが一堂に介して、今回の事業の意義や計画、それぞれの地域の状況や各NGOの経験を共有する、キックオフミーティング的な性格を持つものです。

トレーニング会場の様子(各ローカルNGO、各都市の担当者ら22名の他、PUSTEKLIMのメンバー6名が参加)
また、このトレーニングでは、中央政府から国家開発企画庁の住宅・居住総局ディレクターであり、水供給と衛生改善にかかわる国家レベルのワーキンググループ議長でもあるヌグロホ氏をお招きし、インドネシアの衛生問題にかかわる現況とその改善計画などに関してもご講演いただきました。

国家開発企画庁のヌグロホ氏による講演
1日目と2日目は主に会議室での講演が中心でした。その中でPUSTEKLIM側からは、今回の事業の概要やPUSTEKLIMがこれまでの事業で開発してきたコミュニティ排水処理システムについて、さらに同システムの技術面でのポイントや、住民参加型排水処理システムの形成にあたって発生した問題や取られた対応策などに関して、報告を行いました。各ローカルNGOからは、各団体の概要やこれまでの活動内容やそれらの活動から学んだことなどの報告があり、各都市の政策担当者からは各都市の概要及び衛生設備などの状況、今後の改善計画などについての報告がありました。3日目の午前中は先の事業で設置されたクリチャック地区とスクナン地区の排水処理システムの視察、午後には今後事業をどのように進めていくか、資金負担に関してなどを話しあう議論が行われました。


コミュニティ排水処理設備視察の様子(左:クリチャック地区、右:スクナン地区)
各都市の担当者は、嫌気性処理しか選択肢がないが、嫌気性処理でおよそ100世帯の生活排水を処理するのに必要な土地(約100~200平方メートル)がなかなか見つからないと発表していました。さらに、排水処理システムのための土地が見つからなくて、計画が挫折する場合もあるそうです。PUSTEKLIMの技術であれば、嫌気性処理のみの排水処理システムと比べておよそ5分の1以下の面積で排水処理システムを構築することが出来るので、PUSTEKLIMの技術は、特に都市部の住宅密集地域には適したものではないかと思われました。
さらに、PUSTEKLIMの技術担当者ヘルマン氏の発表によれば、嫌気性処理のみではBOD(水質汚濁の状況を示す一つの指標、値が低いほうがよりきれいな水質)を100ppm程度までしか下げられないが、PUSTEKLIMの技術では20~50ppm程度まで下げられるとのこと。今の国全体の排水基準では、BODに関しては100ppmであり、多くの地域も100ppmとしているが、幾つかの地域では基準を80ppmに下げている所もあるそうです。このような地域は今後増えると予想され、また排水基準もさらに下げられる可能性があり、そうすると嫌気性処理だけでは基準を満たさなくなる可能性もあるとのことです。
先の事業で開発された嫌気性処理と好気性処理の組み合わせによる住民参加型排水処理システムの有効性を実証し、もう一つの選択肢を提唱する価値は十分にあるようです。
その他、個人的にはローカルNGOの方が「1軒の家に1つトイレがあっても、1軒に2~3世帯住んでいて朝などはトイレが混むため、結局、川で用を足す人がいる」とおっしゃっていたのが、印象に残りました。
なお、APEXでは今週末の12月3日(土)に、東北大学の原田秀樹研究室との共催で「アジア地域に適合的な生活排水処理技術の新しい展開」というワークショップを開催しますので、ご関心のある方は是非ご参加ください。
(APEX彦坂)
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