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インドネシアを中心に活動を行う特定非営利活動法人 APEXのスタッフ日記です。ここに書かれたことはスタッフの個人的見解であり、APEXの公式見解とは異なる場合があります。

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【報告】25周年記念行事「日本・インドネシア適正技術会議-共通で多様な未来をめざせるか」

2012年10月6日(土)に、APEX創立25周年記念行事「日本・インドネシア適正技術会議-共通で多様な未来をめざせるか」が開催されました。
この会議では、日本とインドネシアで、私たちがそれぞれめざすべき社会のあり方、そのために必要とされる技術の転換や新しい技術体系について話し合うものです。第一線でご活躍されている方々をゲストスピーカーとしてお招きし、上記のテーマに基づく講演をしていただくとともに、それを踏まえてシンポジウムを行うという内容でした。

会議に先駆けて、APEXの田中より今回の会議の主題である「適正技術」という言葉をめぐる2つの文脈についてや開催趣旨などを説明させていただきました。(よろしければ「適正技術をめぐって」もご覧ください)

最初のご講演は、インドネシア大統領顧問団議長のエミールサリム氏です。

国際会議1
(エミール・サリム氏「経済・社会・環境の調和したインドネシアの発展に向けて」)
エミール・サリム氏は、ますます悪化する人口増加の中で、いわゆる先進国が成長を維持し、途上国から貧困をなくすためには、経済・社会・環境の調和が不可欠とし、エコロジカル・フットプリントという指標を例に、限られた資源を有効に生かす技術(特に再生可能な資源を用いた付加価値の高い技術や再生不可能な資源を用いたグリーン技術など)や企業活動の転換、パートナーシップの構築が必要と述べられていました。

国際会議2
(植田和弘氏「持続可能な日本社会-エネルギー問題を中心に-」)
植田和弘氏のご講演では、原発の問題やこれまでのエネルギー政策の課題が掘り下げられました。その上で、脱原発社会における代替エネルギーについてや再生可能エネルギーを利用した地域発展型事業の展望などについてお話がありました。

国際会議3
(田村政美氏「持続可能なアジアの構築へ向けての国際的対話・協力の促進」)
田村氏は、京都議定書の国際交渉にもあたられた方だということです。その際のエピソード等も交えながら、アジア地域の低炭素成長の実現に向けた日本の活動指針について話されました。田村氏は、2国間オフセット・クレジット制度の活用と技術移転など、官民が連携した技術開発・移転が必要と述べられていました。ご講演後、会場からは、その上でNGO的にはどんな協力がありえるのか、といった質問もありました。

国際会議5
(アントン・スジャルウォ氏「インドネシアの持続可能な開発における適正技術の役割」)
次はアントン・スジャルウォ氏の講演です。ディアン・デサ財団が1970年頃から取り組んできた衛生改善、水供給、エネルギー関連技術の開発を示しつつ、より現場的な視点から適正技術や貧困を克服する技術のあり方などを述べる内容でした。アントン氏は、適正技術をめぐるこれまでの議論の中で、この言葉が時に誤った解釈もされてきたことを説明しながら、「適正技術は、人との繋がりの中で構築されていくものであり、必ずその人に対して何かしらの影響力を持たなければならないもの。そうでなければ、単なるスローガンで終わってしまう。」と述べられており、強く印象に残りました。

国際会議4
(西岡秀三氏「低炭素社会へ向けての産業構造・技術体系の構築」)
西岡氏のご講演では、気候変化を回避しながら持続的な発展を可能にする社会をいかに構築していくかということを主題とし、2050年の80%の温室効果ガス排出量削減へ向けて、どのような技術革新、産業構造などの変化が必要であるか等についてお話をうかがいました。世界的にはアジアが気候変化の鍵を握っているとのことで、技術社会の構築と(低炭素社会の)国家政策化の実現のために、科学者、研究者、政策担当者のネットワーク化も進んでいるそうです。

国際会議6
(田中直「適正技術と代替社会」)
そして、最後はAPEXの田中が講演しました。講演は、近代科学技術が引き起こしている問題提起から始まり、「適正技術」をめぐる議論、そして、「適正技術」がなぜ今日新しい意義を持って論じられるべきなのか、というところが主題でしたが、これに、アントンさんと同様、インドネシアでの実践から得た適正技術の要件などが盛り込まれていました。

これまでの既存の近代科学技術の体系は、環境の破壊や汚染、資源の浪費、人間の疎外、そして貧困と格差を拡大させるようなものでした。APEXが目指すもの、そして「適正な技術」のあり方とは、一部の近代セクターや資本家、エリート層のための技術開発ではなく、世界人口の大多数を占める途上国の人々の立場に立ち、彼らの生活をいい意味で豊かにし、かつ環境に負担をかけず、資源を浪費することもない技術にあります。先進国と途上国での対話と相互理解も極めて重要であり、そこでの連携・連鎖を代替社会へ向けての技術体系として構築していく必要があると述べられていました。

午前中から始まった会議は、午後6時ごろまで続きましたが、退出される方も少なかったです。人口増加、温暖化、エネルギー問題、貧困、格差といろいろな問題を乗り越えていくために、あたらしい技術体系の構築や価値観の変化、国際間の相互理解・ネットワーク化が必要など、多角的ですがある一定の方向性を持って議論が行われていたのは、大変意味のあることだったと思います。
※なお、当日の講演資料は、APEXのHP「会員のページ」に掲載しています。会員の方でまだ登録をしていない方は、事務局にご連絡下さい。

国際会議7

会議終了後、会場を移してAPEXの25周年記念パーティーが行われました。講師の方々やAPEXの会員の方など多くの方が参加され、サリム氏ご夫妻やアントン氏も楽しんでいるようでした。
パーティの最後では、ボランティアチームの演奏で、「心の友」とインドネシア民謡の「ブンガワン・ソロ」を合唱。

25周年を迎えて、これからも「適正技術」の流れを大きくしていくためにますます努力していく必要がありますが、それと同時に、活動を支えて下さっている方への感謝の気持ちを忘れてはいけないと再認識させられました。

(APEX岩崎佳恵)
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