ジャワ島中部地震救援活動(7/21)
(7月21日)
ジョクジャカルタの地震(5月27日)に続いて、7月17日にはジャワ島南岸の津波、7月19日にはスンダ海峡の地震が発生し、まるでインドネシアは地震と津波の国のようになってしまいました。
今日は、ディアン・デサのスタッフに案内してもらい、バントゥル県の被災地を訪ねました。訪ねたジェティス郡パタラン村では、壊れた家の片付けは進んだものの、本格的な住宅復興には手がつかず、かといってテント暮らしにも限界があって、手に入る材料で仮設的な住まいをとにもかくにも建てて当座をしのごうとしている状況のように見えます。政府から一軒当たり最大3000万ルピア(約40万円)の住宅復興援助が下りることになっていますが、それがいつ入ってくるかはわからないとのこと。その「当座の住まい」にはかなり幅があって、テントのバリエーションといえるものから、恒久でないにしても相当期間にわたって住めそうなものまであります。木や竹で枠組みを組んで、グデックという竹で編んだ壁材を貼り付けたり、廃材やビニールシートで壁を塞いだりしています。今週家の枠組みをつくったばかりという主婦に会いました。近所の人たちとのゴトン・ロヨン(相互扶助)で出来上がったとのこと。親戚や知人からの援助で建てているケースもあるようです。日本では仮設住宅というと政府がつくるものという観念がありますが、ここでは政府がなかなかきちんとやってくれず、それを助け合いの伝統で補っているともいえます。


(左の写真)簡素な仮設住宅を建てて住んでいる被災者(バントゥル県ジェティス郡)
(右の写真)近隣の人たちのゴトン・ロヨン(相互扶助)で家の骨組みが出来たという主婦(パントゥル県ジェティス郡)
APEXで支援しているディアン・デサ財団の救援活動としては、MCK(トイレ+水浴び場+洗濯場)は、まず第一段階として、1ユニット10室のタイプのものを120ユニット建設したあと、第二段階として1ユニット二室のタイプを合計500~600ユニットほど建設しようとしています。前者は仮設的で長期の使用には耐えませんが、後者は半恒久的につかえるものです。半恒久的MCKは、下部構造はセプティックタンク、コンクリート打ちの水場とやはりコンクリート製の50cmほどの高さの壁を一体化してつくり、その上部にトタン板の壁と同じくトタン板の屋根を備えたものです。それぞれの部屋がトイレにも水浴び場にも洗濯場にもなります。5人で5日間作業すると出来上がるとのこと。地域の人をディアン・デサが雇用する形で仕事を進め、その賃金で住民を支援することもはかっています。二室のタイプのMCKは、これまでに合計145ユニットの建設が手がけられ、既に80ユニットの建設が終わりました。ひとつのユニットを5~6軒で共用しています。出来上がったものを見せてもらいましたが、しっかりしたつくりで風雨にも耐え、使い心地もよさそうです。私も試しに用を足してみましたが快適でした。



(左の写真)二室の半恒久MCKの建設作業(バントゥル県ドゥリンゴ郡)
(中央の写真)完成した二室タイプの半恒久的MCK(バントゥル県ジェティス郡)
(右の写真)二室タイプMCKの内部
壊れたり、泥が湧き出たりして使えなくなった井戸の修復作業も始まっています。トラックにディーゼル発電機と水中ポンプを積んでいき、発電機でポンプを動かして井戸の中の泥水を汲み上げる作業です。いつも排水処理装置やバイオマスのパイロットプラントの製作・工事をお願いしているディアン・デサ財団の工場の人たちが活躍していました。現在は2台のポンプを用いて1日当たり15~20井を清掃していますが、来週からポンプを4台追加して6台とし、より多くの井戸の修復に当たるそうです。合計750井から1000井の修復をめざしています。APEXの長年の協力先NGOのひとつであるソロのYPKM(Yayasan Pendidikan Kesejahteraan Masyarakat, 社会教育福祉財団)に、井戸のつるべを引っ掛ける鉄製の支柱を注文しているそうです。今YPKMは財政的に厳しい状況にあるため、APEXでも排水処理設備の生産をまかせるなどして支援しようとしています。


(左の写真)泥水で埋まった井戸の中を清掃するディアン・デサ財団のスタッフと住民(バントゥル県ジェティス郡)
(右の写真)井戸から汲み上げ、放出される泥水で子供が遊んでいた(バントゥル県ジェティス郡)
今日現場で見た活動は以上ですが、この他に浄水の供給も続けていて、30~35トン/日を配給しています。そのうち4割ほどは、ムラピ山の火砕流の被災地向け、残りの6割がバントゥル県などの地震被災地向けです。また、前回の日誌で書いたメルシー・コープ社寄贈の工具・農具セットは、ドゥリンゴ郡、プレレット郡で約3200セットの配布を終え、まだ800セットほど在庫があるので、別の地域に配布しようとしているそうです。さらに、オックスファムより、衛生セット(石鹸、洗剤、生理用品、バケツなど)8000セット、クレアランスツールキット(手押し車、スコップ、マスク、ノコギリなど)600セット、井戸水のポンピングアップシステム40セットの寄贈があり、グヌングキドゥール県パトック郡で配布・設置予定とのことです。


(左の写真)手押し車、スコップなどの工具・農具セットの配布作業(バントゥル県ドゥリンゴ郡)
(右の写真)工具・農具セットを持ち帰る被災者(バントゥル県プレレット郡)
7月17日の津波で被災したパンガンダランにも、地震の翌日から35名のボランティアが出かけ、行方不明者の捜索とともに何が必要かの調査をしている状態です。
なお、これまでのいただいた募金総額は7,816,770円に達しました(7月21日現在、うち、日本国際ボランティアセンターから6,266,650円)。このうち、7月3日までにいただいた分の95%として7,337,804円を3回に分けて既にディアン・デサ財団に送金しており、ご寄付は地震直後の緊急支援物資の調達・配布や、上の水供給・衛生改善活動に必要な資金の一部として使われています。復興にはまだまだ時間がかかりそうですので、今後ともご支援のほどよろしくお願いします。来月上旬に4回目の送金を行う予定です。
(田中直)
ジョクジャカルタの地震(5月27日)に続いて、7月17日にはジャワ島南岸の津波、7月19日にはスンダ海峡の地震が発生し、まるでインドネシアは地震と津波の国のようになってしまいました。
今日は、ディアン・デサのスタッフに案内してもらい、バントゥル県の被災地を訪ねました。訪ねたジェティス郡パタラン村では、壊れた家の片付けは進んだものの、本格的な住宅復興には手がつかず、かといってテント暮らしにも限界があって、手に入る材料で仮設的な住まいをとにもかくにも建てて当座をしのごうとしている状況のように見えます。政府から一軒当たり最大3000万ルピア(約40万円)の住宅復興援助が下りることになっていますが、それがいつ入ってくるかはわからないとのこと。その「当座の住まい」にはかなり幅があって、テントのバリエーションといえるものから、恒久でないにしても相当期間にわたって住めそうなものまであります。木や竹で枠組みを組んで、グデックという竹で編んだ壁材を貼り付けたり、廃材やビニールシートで壁を塞いだりしています。今週家の枠組みをつくったばかりという主婦に会いました。近所の人たちとのゴトン・ロヨン(相互扶助)で出来上がったとのこと。親戚や知人からの援助で建てているケースもあるようです。日本では仮設住宅というと政府がつくるものという観念がありますが、ここでは政府がなかなかきちんとやってくれず、それを助け合いの伝統で補っているともいえます。


(左の写真)簡素な仮設住宅を建てて住んでいる被災者(バントゥル県ジェティス郡)
(右の写真)近隣の人たちのゴトン・ロヨン(相互扶助)で家の骨組みが出来たという主婦(パントゥル県ジェティス郡)
APEXで支援しているディアン・デサ財団の救援活動としては、MCK(トイレ+水浴び場+洗濯場)は、まず第一段階として、1ユニット10室のタイプのものを120ユニット建設したあと、第二段階として1ユニット二室のタイプを合計500~600ユニットほど建設しようとしています。前者は仮設的で長期の使用には耐えませんが、後者は半恒久的につかえるものです。半恒久的MCKは、下部構造はセプティックタンク、コンクリート打ちの水場とやはりコンクリート製の50cmほどの高さの壁を一体化してつくり、その上部にトタン板の壁と同じくトタン板の屋根を備えたものです。それぞれの部屋がトイレにも水浴び場にも洗濯場にもなります。5人で5日間作業すると出来上がるとのこと。地域の人をディアン・デサが雇用する形で仕事を進め、その賃金で住民を支援することもはかっています。二室のタイプのMCKは、これまでに合計145ユニットの建設が手がけられ、既に80ユニットの建設が終わりました。ひとつのユニットを5~6軒で共用しています。出来上がったものを見せてもらいましたが、しっかりしたつくりで風雨にも耐え、使い心地もよさそうです。私も試しに用を足してみましたが快適でした。



(左の写真)二室の半恒久MCKの建設作業(バントゥル県ドゥリンゴ郡)
(中央の写真)完成した二室タイプの半恒久的MCK(バントゥル県ジェティス郡)
(右の写真)二室タイプMCKの内部
壊れたり、泥が湧き出たりして使えなくなった井戸の修復作業も始まっています。トラックにディーゼル発電機と水中ポンプを積んでいき、発電機でポンプを動かして井戸の中の泥水を汲み上げる作業です。いつも排水処理装置やバイオマスのパイロットプラントの製作・工事をお願いしているディアン・デサ財団の工場の人たちが活躍していました。現在は2台のポンプを用いて1日当たり15~20井を清掃していますが、来週からポンプを4台追加して6台とし、より多くの井戸の修復に当たるそうです。合計750井から1000井の修復をめざしています。APEXの長年の協力先NGOのひとつであるソロのYPKM(Yayasan Pendidikan Kesejahteraan Masyarakat, 社会教育福祉財団)に、井戸のつるべを引っ掛ける鉄製の支柱を注文しているそうです。今YPKMは財政的に厳しい状況にあるため、APEXでも排水処理設備の生産をまかせるなどして支援しようとしています。


(左の写真)泥水で埋まった井戸の中を清掃するディアン・デサ財団のスタッフと住民(バントゥル県ジェティス郡)
(右の写真)井戸から汲み上げ、放出される泥水で子供が遊んでいた(バントゥル県ジェティス郡)
今日現場で見た活動は以上ですが、この他に浄水の供給も続けていて、30~35トン/日を配給しています。そのうち4割ほどは、ムラピ山の火砕流の被災地向け、残りの6割がバントゥル県などの地震被災地向けです。また、前回の日誌で書いたメルシー・コープ社寄贈の工具・農具セットは、ドゥリンゴ郡、プレレット郡で約3200セットの配布を終え、まだ800セットほど在庫があるので、別の地域に配布しようとしているそうです。さらに、オックスファムより、衛生セット(石鹸、洗剤、生理用品、バケツなど)8000セット、クレアランスツールキット(手押し車、スコップ、マスク、ノコギリなど)600セット、井戸水のポンピングアップシステム40セットの寄贈があり、グヌングキドゥール県パトック郡で配布・設置予定とのことです。


(左の写真)手押し車、スコップなどの工具・農具セットの配布作業(バントゥル県ドゥリンゴ郡)
(右の写真)工具・農具セットを持ち帰る被災者(バントゥル県プレレット郡)
7月17日の津波で被災したパンガンダランにも、地震の翌日から35名のボランティアが出かけ、行方不明者の捜索とともに何が必要かの調査をしている状態です。
なお、これまでのいただいた募金総額は7,816,770円に達しました(7月21日現在、うち、日本国際ボランティアセンターから6,266,650円)。このうち、7月3日までにいただいた分の95%として7,337,804円を3回に分けて既にディアン・デサ財団に送金しており、ご寄付は地震直後の緊急支援物資の調達・配布や、上の水供給・衛生改善活動に必要な資金の一部として使われています。復興にはまだまだ時間がかかりそうですので、今後ともご支援のほどよろしくお願いします。来月上旬に4回目の送金を行う予定です。
(田中直)
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