インドネシアの無電化村と明暗
APEX国内事業・広報担当の塩原です。このブログでは、いつもは国内事業のことについて報告していますが、今回は珍しくインドネシアの報告です。というのも、APEXの国内事業である「適正技術人材育成研修」から派生したプロジェクトの一つとして、無電化村での炭のガス化発電事業がスタートするにあたり、研修も兼ねてその予備調査に同行させていただいたからです。(新規事業開始に関する詳細はニュースリリースのページをご覧ください。)
2015年1月13日から16日までの4日間という短い間でしたが、その間にもいろいろなことがあり、とてもすべてをご報告することはできませんので、今回一番印象に残った、「明るいこと」と「暗いこと」について、インドネシア現地での体験から感じたことを少し報告したいと思います。
2015年3月から、トヨタ自動車の環境活動助成プログラムからの助成期間が開始されるAPEXの新事業「インドネシア西カリマンタン州の無電化村における炭のガス化発電」は、経済発展とともに電化率が上がっているインドネシア国の中でも、山間部など電力網の到達する見込みがきわめて低い地域を対象に、その地域内で調達できる炭によるガス化発電技術を開発し、住民自身で運営していける仕組みを構築する事業です。
現状そのような村では、何名かの住民が所持している発電機を、外部から現金で購入したガソリンや軽油を使って動かして、最低限必要な電力を得ています。電力は、子どもの学習や夕食の準備など、主に夕方以降の活動に必要な照明のために使われていますが、現金収入の機会の乏しい地域では、電力を得るための燃料代が収入に占める割合がとても高く、住民にとって大きな負担になっています。今回の予備調査では、そのような状況にある村を訪問し、今回のプロジェクトへの住民の参加意思や、住民のニーズ、必要な電力量などを決めるのに必要な基本的な情報の調査などをしました。
とまぁ、プロジェクトの状況や進捗については、会報などで改めてお知らせさせていただくとしまして、今回のテーマである「明るいこと」と「暗いこと」についてお話するにあたり、無電化村の住民とのミーティングのようすをご覧ください。

住民とのミーティング開始直後はこんな感じです。だいたい夕方16:30くらいから始まりました。
約1時間半のミーティングを終える頃には…

真っ暗になりました。
いただいたコーヒーのコップがどこにあるかわからなくて、こぼしてしまわないか心配になるくらい真っ暗になった中でも、当たり前のようにミーティングは続きます。照明がないということ自体が、日本で生活してきた私にとっては新鮮な体験となりました。そして、このような暗い中で日常的に生活をしている人がいるという事実が確かにあるという実感が湧き、いっそう今回のプロジェクトを成功させたいという気持ちが芽生えました。
ただし、インドネシアでは、電気が通ったからといって、必ずしも明るいわけではありません。電力が安定していない地域では、いまなお「停電」が頻発します。
2日目に泊まった、現地パートナー団体ディアンタマ財団の炭焼き研修センターは電気が通っていますが、ミーティング後に到着したときはまさに停電中でした。
停電の中、バーベキューのための炭のほのかな明かりを囲みながらの夕食です。そんなとき、頭上には一匹のホタルが。今回の訪問の参加者の一人は、本物のホタルを初めて見たとのことで、「ホタルって、こんな色の光なんだなぁ。来てよかったー。」とその青白くて柔らかい光を見てつぶやいていました。
しばらくすると、停電が復旧してあたり一面に照明が灯りました。

一瞬ほっとしたような気がしましたが、さっきいたホタルはどこに行ったかわからなくなってしまいました。かわりに、自分のごはんの上に蚊のような小さな虫が乗っているのに気が付きました。最近、食品への異物混入問題がいろいろと議論されていますが、少し暗いところだったら小さな虫くらいだったら口に入れてしまってもわからなかったのではないかと思いました。明るくなったというだけで、虫が乗っていた部分だけなんだか食べる気が憚れてしまったことに、なんだか妙な違和感を持ちました。
思えば日本のデパートの化粧品売り場はこれでもかというくらいに明るくてまぶしい。日本では照明があることが当たり前で、夜になれば照明を使って明るくすることが当たり前です。しかし「明るい」というのも、行き過ぎると不必要なまでに小さなことにまで気を取られてしまうのではないでしょうか。そんな一方で、「暗い」ところでは見えていたはずのものが、気付かないうちに見えなくなってしまっていることもあるのかもしれません。
いわゆる先進国民の私がそんなことを考えている中でも、何度か停電が続きました。停電中は、食事を作ってくれている方のお子さんが、充電式の蛍光灯ランプで勉強をしていました。でも、しばらくするとそのランプも電気が切れてしまいました。
なんだかんだ言っても、やはり、生活や教育には最低限の照明のための電力は必要です。プロジェクトを通じて、必要とされている場所にできる限り照明や電気が供給されるようになることを心から願っています。(APEX塩原)
2015年1月13日から16日までの4日間という短い間でしたが、その間にもいろいろなことがあり、とてもすべてをご報告することはできませんので、今回一番印象に残った、「明るいこと」と「暗いこと」について、インドネシア現地での体験から感じたことを少し報告したいと思います。
2015年3月から、トヨタ自動車の環境活動助成プログラムからの助成期間が開始されるAPEXの新事業「インドネシア西カリマンタン州の無電化村における炭のガス化発電」は、経済発展とともに電化率が上がっているインドネシア国の中でも、山間部など電力網の到達する見込みがきわめて低い地域を対象に、その地域内で調達できる炭によるガス化発電技術を開発し、住民自身で運営していける仕組みを構築する事業です。
現状そのような村では、何名かの住民が所持している発電機を、外部から現金で購入したガソリンや軽油を使って動かして、最低限必要な電力を得ています。電力は、子どもの学習や夕食の準備など、主に夕方以降の活動に必要な照明のために使われていますが、現金収入の機会の乏しい地域では、電力を得るための燃料代が収入に占める割合がとても高く、住民にとって大きな負担になっています。今回の予備調査では、そのような状況にある村を訪問し、今回のプロジェクトへの住民の参加意思や、住民のニーズ、必要な電力量などを決めるのに必要な基本的な情報の調査などをしました。
とまぁ、プロジェクトの状況や進捗については、会報などで改めてお知らせさせていただくとしまして、今回のテーマである「明るいこと」と「暗いこと」についてお話するにあたり、無電化村の住民とのミーティングのようすをご覧ください。

住民とのミーティング開始直後はこんな感じです。だいたい夕方16:30くらいから始まりました。
約1時間半のミーティングを終える頃には…

真っ暗になりました。
いただいたコーヒーのコップがどこにあるかわからなくて、こぼしてしまわないか心配になるくらい真っ暗になった中でも、当たり前のようにミーティングは続きます。照明がないということ自体が、日本で生活してきた私にとっては新鮮な体験となりました。そして、このような暗い中で日常的に生活をしている人がいるという事実が確かにあるという実感が湧き、いっそう今回のプロジェクトを成功させたいという気持ちが芽生えました。
ただし、インドネシアでは、電気が通ったからといって、必ずしも明るいわけではありません。電力が安定していない地域では、いまなお「停電」が頻発します。

停電の中、バーベキューのための炭のほのかな明かりを囲みながらの夕食です。そんなとき、頭上には一匹のホタルが。今回の訪問の参加者の一人は、本物のホタルを初めて見たとのことで、「ホタルって、こんな色の光なんだなぁ。来てよかったー。」とその青白くて柔らかい光を見てつぶやいていました。
しばらくすると、停電が復旧してあたり一面に照明が灯りました。

一瞬ほっとしたような気がしましたが、さっきいたホタルはどこに行ったかわからなくなってしまいました。かわりに、自分のごはんの上に蚊のような小さな虫が乗っているのに気が付きました。最近、食品への異物混入問題がいろいろと議論されていますが、少し暗いところだったら小さな虫くらいだったら口に入れてしまってもわからなかったのではないかと思いました。明るくなったというだけで、虫が乗っていた部分だけなんだか食べる気が憚れてしまったことに、なんだか妙な違和感を持ちました。
思えば日本のデパートの化粧品売り場はこれでもかというくらいに明るくてまぶしい。日本では照明があることが当たり前で、夜になれば照明を使って明るくすることが当たり前です。しかし「明るい」というのも、行き過ぎると不必要なまでに小さなことにまで気を取られてしまうのではないでしょうか。そんな一方で、「暗い」ところでは見えていたはずのものが、気付かないうちに見えなくなってしまっていることもあるのかもしれません。

なんだかんだ言っても、やはり、生活や教育には最低限の照明のための電力は必要です。プロジェクトを通じて、必要とされている場所にできる限り照明や電気が供給されるようになることを心から願っています。(APEX塩原)
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