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インドネシアを中心に活動を行う特定非営利活動法人 APEXのスタッフ日記です。ここに書かれたことはスタッフの個人的見解であり、APEXの公式見解とは異なる場合があります。

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箱と中身―<社会的共通資本をめぐって>(2015年度「開発とNGO」研究会第1回)

会場のようす1
2015年度も、APEX主催「開発とNGO」研究会が始まりました。

 この研究会は、NGO活動を行う上での世界観を形成するべく2005年から始まったもので、重要文献を輪読し、ディスカッションを行う会です。社会の構造を深く洞察した文献から学び、そこで得たものをもとに、実践的に代替社会を目指すというスタンスのAPEXにとって、たいへん重要な活動です。意外と他のNGOでは聞かない、ユニークな活動でもあります。

 実は、わたしがAPEXに深く関わるきっかけになった会でもあり、当時一緒に研究会に出ていたメンバーは、現在のボランティアグループのコアメンバーだったりします。そのことについては、またの機会にお話します。

 さて、今回は宇沢弘文の「社会的共通資本」をテキストとして取り上げました。社会的共通資本とは、テキストによれば、「一つの国ないし特定の地域に住むすべての人々が、ゆたかな経済生活を営み、すぐれた文化を展開し、人間的に魅力ある社会を持続的、安定的に維持することを可能にするような社会的装置」と定義されていて、具体的には、自然環境、社会的インフラストラクチャー、制度資本が挙げられています。

コメント_中西 今回の議論では、この「社会的共通資本」という概念でなにが見えるのか、という参加者からのコメントがありました。経済学的な視点に則って展開される論は、良くも悪くも新古典派の批判に終始しているのではないか、という指摘です。

 また、炭素税の提案など、外部不経済の内部化という点については大変優れた論を持つこの著書の中で「農社」の事例だけが少し浮いているのではないかという指摘もありました。都市と農村、工業と農業の根本的な性格の違いを踏まえた経済システムの設計という点は、今年度の研究会のシリーズで一貫した論点になりそうです。

 今回の研究会で印象深かったのは、代表のコメントの「箱と中身」という言葉でした。豊かな生活のための必要条件としての「社会的共通資本」を「箱」とすると、「中身」をどうするのか、という問いです。「社会的共通資本」は、「箱」を提示しているだけでも十分に優れた論であり、今年度の研究会の第一回目に相応しい著書でした。「中身」については、今年度の研究会で、参加者のみなさまとともに考えていきたいと思います。

 できれば、今年は何かひとつ目に見える形で成果を作れればいいですね。
(APEX塩原)

 PS:そういえば、著者の言うことが現在実現している点はあるか、という議論がありましたが、個人的には、生態系サービスという考え方が出てきているのは、実現に向かうひとつ流れという気はしています。(当日私だけ発言していなかったので、この場をお借りして。。)
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