インドネシアスタディーツアー2016 前編(フローレス島編)
8月10~18日にインドネシアスタディーツアーを実施しました。
このツアーは、2009年より始まり、2012年からは、「適正技術人材育成研修」内のカリキュラムの一部として実施ておりましたが、今年は5年ぶりに一般募集もしました。
今回は、APEXの活動にとどまらず、現地の社会や産業の現状、環境の問題等をご覧いただき、社会貢献活動が行われている現場を訪ねながら、国際協力活動への理解を深めていただきくことを趣旨として実施しました。
そのため、前半のフローレス島では、地方政府を訪ねたり、市場や各種産業(食品加工、農業、漁業)に携わる方にお話を聞き、どのような支援活動が必要かを話し合うところまでを目的にしております。
前半の8/11~14におけるツアー概要について、フローレス島在住の彦坂がレポートします。
8月11日から14日にかけて、スタッフ2名を含むスタディーツアー参加者の方々がマウメレを訪問されました。
11日の昼過ぎに参加者の皆さんがマウメレへ到着してから、ホテルでマウメレのあるシッカ県の現状を説明し、シッカ県でAPEXが取り組んできたことをご紹介しました。

マウメレの空港で
2日目の12日には、まず市場へ行き、市場の管理事務所長さんから市場の運営の仕組みや収益、ごみ処理などについてお話を伺いました。

市場の管理者の方に話を聞く
その後、シッカ県のBAPPEDA(地域開発計画局)へ。BAPPEDAは県内の経済情勢や農業を初めとする諸産業の状況などの情報を取りまとめて、県の開発をどのように進めていくか決める機関です。また、私達NGOが県内で活動する上での窓口でもあります。

BAPPEDA訪問
BAPPEDAの後はウリン村という所にある、魚のアボンを生産している女性グループを訪問しました。ジャワ島などでよく作られるアボンは通常、牛肉を乾燥させたものですが、こちらでは牛肉は高いので魚(マグロ)の肉を使うことを思いついたそうです。2003年から生産を開始して、今ではフローレス島内だけでなく、ティモール島やジャワ島、スラウェシ島などにも販売しているとのことです。


左:マグロの肉を使ったアボン。パンと一緒に食べると美味しいそうです。
右:アボンを作っている女性グループの方々と
その後、マウメレに戻って昼食を取り、シッカ県南部のネンブラ村に向かいました。ネンブラ村はジャトロファの種子の収集を行っている地域の一つで、住民の方は農業に従事している方が多いです。住民との会合の際に、農業における収穫物についてや経済状況についてお聞きしました。また、女性の代表的な手仕事でもある織物(イカット)の製作過程も見せてもらいながら、織物製作に関するお話もお聞きできました。この日はそのまま、種子収集人宅でのホームステイも実現しました。
村長さんや付近の住民も集まってみんなで夕食を食べた後は、モケと呼ばれるヤシ酒を飲みながら、親睦を深めました。


ネンブラ村での住民との会合 イカット作りの様子
3日目の13日の朝になると、参加者の皆さんは朝食を作っている女性陣と会話をしたり、調理のための薪割りを手伝ったりして、各自住民との交流を楽しんでいる様子でした。


ホームステイ先の台所にて。火のそばにやってくる子犬たち。
朝食後、ネンブラ村を出発して、ジャトロファ・センターに向かいました。ジャトロファ・センターでは、センター内の設備を案内した後、ココナッツ・オイルの搾油の様子をご覧いただきました。
ココナツオイル搾油の様子
その後、ココナッツ・オイルを使用してピサン・ゴレン(揚げバナナ)、ウビ・ゴレン(揚げ芋)の試食会を行いました。この試食会には、ココナッツ・オイルの宣伝も兼ねてジャトロファ・センター周辺の住民も招待しています。ココナツ油を料理に使う機会が少ない日本の方は、独特の風味が加わっておいしいとおっしゃっていましたが、住民の方々は、伝統的な方法で普段からココナツ油を作っているそうで、それに比べると、ふるまった方の油にはまだ少しココナッツの臭みがある点を指摘されていました。しかし、有用なアドバイスも頂くことができました。



試食会では、ジャトロファ・センター周辺の住民が調理を手伝ってくれました。
ジャトロファ・センターで昼食を取ってから、ジャトロファ事業の協力先であるディアン・デサ財団がフローレス島で実施してきた水供給・衛生事業のサイトを訪問しました。この辺りでは、水がないからトイレを作れないという住民が多くいました。そこで、ディアン・デサではそのような住民の家に雨水を溜めるタンクを設置して、セプティック・タンク(最も簡素な排水処理設備)を備えたトイレを建設してきました。

YDDが設置した雨水タンク
訪問先がヤシ酒(モケ)を作っている農家さんだったことから、偶然にもその生産現場を見せてもらえることができました。モケはヤシの花から採取した蜜(アルコール発酵したもの)を蒸留させて作られます。アルコール濃度は30度以上。出来立てのモケも試飲させてもらいました。

モケの蒸留炉
それから同財団の事務所に行き、フローレス島でこれまでに行ってきた活動などについてお話を伺いました。ディアン・デサ財団の東ヌサトゥンガラ州支部は1980年の設立以来、10,000ヶ所以上の水供給タンクを設置するなど、住民に密着した支援を実施してきたそうです。
タンクやトイレの設置先の選定にあたっては、同地区の住民にも一部の材料や労働力を提供してもらうことをまず確認するそうです。提供した設備に対して所有者意識を持ってもらうためと、使用される技術を住民自身が習得することが出来るようにとのこと。実際にそこで技術を学んだ住民が、各自の村や他の地域の住民にも技術を広めているケースもあるようです。
ディアン・デサ財団の事務所を出た後は、スラウェシ島からの移民が多く住む漁村(ウォロマラン村)を訪問しました。高床式の住居が多く、一部は海上に建てられています。衛生状態もあまり良くない所です。ゴミも散らかし放題のありさま。案内を依頼していた人の都合が悪くなり、自分たちだけで住宅地を歩いてみただけですが、想像を超えるような場所であったためか、来た甲斐があったと参加者の方々は言っていました。

こうして、12日、13日と実質2日間、普段の観光ではめったに訪問しないような所に行き、多くのことを学んだ参加者の皆さんは14日の朝、デンパサールへ向けて出発しました。
後半(バリ、ジョクジャカルタ編)はこちら
(APEX彦坂)
このツアーは、2009年より始まり、2012年からは、「適正技術人材育成研修」内のカリキュラムの一部として実施ておりましたが、今年は5年ぶりに一般募集もしました。
今回は、APEXの活動にとどまらず、現地の社会や産業の現状、環境の問題等をご覧いただき、社会貢献活動が行われている現場を訪ねながら、国際協力活動への理解を深めていただきくことを趣旨として実施しました。
そのため、前半のフローレス島では、地方政府を訪ねたり、市場や各種産業(食品加工、農業、漁業)に携わる方にお話を聞き、どのような支援活動が必要かを話し合うところまでを目的にしております。
前半の8/11~14におけるツアー概要について、フローレス島在住の彦坂がレポートします。
8月11日から14日にかけて、スタッフ2名を含むスタディーツアー参加者の方々がマウメレを訪問されました。
11日の昼過ぎに参加者の皆さんがマウメレへ到着してから、ホテルでマウメレのあるシッカ県の現状を説明し、シッカ県でAPEXが取り組んできたことをご紹介しました。

マウメレの空港で
2日目の12日には、まず市場へ行き、市場の管理事務所長さんから市場の運営の仕組みや収益、ごみ処理などについてお話を伺いました。

市場の管理者の方に話を聞く
その後、シッカ県のBAPPEDA(地域開発計画局)へ。BAPPEDAは県内の経済情勢や農業を初めとする諸産業の状況などの情報を取りまとめて、県の開発をどのように進めていくか決める機関です。また、私達NGOが県内で活動する上での窓口でもあります。

BAPPEDA訪問
BAPPEDAの後はウリン村という所にある、魚のアボンを生産している女性グループを訪問しました。ジャワ島などでよく作られるアボンは通常、牛肉を乾燥させたものですが、こちらでは牛肉は高いので魚(マグロ)の肉を使うことを思いついたそうです。2003年から生産を開始して、今ではフローレス島内だけでなく、ティモール島やジャワ島、スラウェシ島などにも販売しているとのことです。


左:マグロの肉を使ったアボン。パンと一緒に食べると美味しいそうです。
右:アボンを作っている女性グループの方々と
その後、マウメレに戻って昼食を取り、シッカ県南部のネンブラ村に向かいました。ネンブラ村はジャトロファの種子の収集を行っている地域の一つで、住民の方は農業に従事している方が多いです。住民との会合の際に、農業における収穫物についてや経済状況についてお聞きしました。また、女性の代表的な手仕事でもある織物(イカット)の製作過程も見せてもらいながら、織物製作に関するお話もお聞きできました。この日はそのまま、種子収集人宅でのホームステイも実現しました。
村長さんや付近の住民も集まってみんなで夕食を食べた後は、モケと呼ばれるヤシ酒を飲みながら、親睦を深めました。


ネンブラ村での住民との会合 イカット作りの様子
3日目の13日の朝になると、参加者の皆さんは朝食を作っている女性陣と会話をしたり、調理のための薪割りを手伝ったりして、各自住民との交流を楽しんでいる様子でした。


ホームステイ先の台所にて。火のそばにやってくる子犬たち。
朝食後、ネンブラ村を出発して、ジャトロファ・センターに向かいました。ジャトロファ・センターでは、センター内の設備を案内した後、ココナッツ・オイルの搾油の様子をご覧いただきました。
ココナツオイル搾油の様子
その後、ココナッツ・オイルを使用してピサン・ゴレン(揚げバナナ)、ウビ・ゴレン(揚げ芋)の試食会を行いました。この試食会には、ココナッツ・オイルの宣伝も兼ねてジャトロファ・センター周辺の住民も招待しています。ココナツ油を料理に使う機会が少ない日本の方は、独特の風味が加わっておいしいとおっしゃっていましたが、住民の方々は、伝統的な方法で普段からココナツ油を作っているそうで、それに比べると、ふるまった方の油にはまだ少しココナッツの臭みがある点を指摘されていました。しかし、有用なアドバイスも頂くことができました。



試食会では、ジャトロファ・センター周辺の住民が調理を手伝ってくれました。
ジャトロファ・センターで昼食を取ってから、ジャトロファ事業の協力先であるディアン・デサ財団がフローレス島で実施してきた水供給・衛生事業のサイトを訪問しました。この辺りでは、水がないからトイレを作れないという住民が多くいました。そこで、ディアン・デサではそのような住民の家に雨水を溜めるタンクを設置して、セプティック・タンク(最も簡素な排水処理設備)を備えたトイレを建設してきました。

YDDが設置した雨水タンク
訪問先がヤシ酒(モケ)を作っている農家さんだったことから、偶然にもその生産現場を見せてもらえることができました。モケはヤシの花から採取した蜜(アルコール発酵したもの)を蒸留させて作られます。アルコール濃度は30度以上。出来立てのモケも試飲させてもらいました。

モケの蒸留炉
それから同財団の事務所に行き、フローレス島でこれまでに行ってきた活動などについてお話を伺いました。ディアン・デサ財団の東ヌサトゥンガラ州支部は1980年の設立以来、10,000ヶ所以上の水供給タンクを設置するなど、住民に密着した支援を実施してきたそうです。
タンクやトイレの設置先の選定にあたっては、同地区の住民にも一部の材料や労働力を提供してもらうことをまず確認するそうです。提供した設備に対して所有者意識を持ってもらうためと、使用される技術を住民自身が習得することが出来るようにとのこと。実際にそこで技術を学んだ住民が、各自の村や他の地域の住民にも技術を広めているケースもあるようです。
ディアン・デサ財団の事務所を出た後は、スラウェシ島からの移民が多く住む漁村(ウォロマラン村)を訪問しました。高床式の住居が多く、一部は海上に建てられています。衛生状態もあまり良くない所です。ゴミも散らかし放題のありさま。案内を依頼していた人の都合が悪くなり、自分たちだけで住宅地を歩いてみただけですが、想像を超えるような場所であったためか、来た甲斐があったと参加者の方々は言っていました。

こうして、12日、13日と実質2日間、普段の観光ではめったに訪問しないような所に行き、多くのことを学んだ参加者の皆さんは14日の朝、デンパサールへ向けて出発しました。
後半(バリ、ジョクジャカルタ編)はこちら
(APEX彦坂)
- 関連記事
-
- インドネシアスタディーツアー2016 後編(バリ、ジョクジャカルタ編)
- インドネシアスタディーツアー2016 前編(フローレス島編)
- 巨大機械―メガマシンを考える 2016「開発とNGO」研究会第2回