世界を止める――2017「開発とNGO」研究会第2回

今回のテキストは、もともとは1970年代に書かれた文章ですが、2003年に文庫化、次いで2012年には『真木悠介著作集I』として復刻しており、今でも手に取りやすい本です。
今回は、私が本の要約を担当させていただきました。というのも、私は大学院生時代にフィールドワークを通じた規範や理念の創出をテーマとしており、今回のテキストに親和性を感じたからです。この本では、人類学や民俗学の記述を素材としたインディオの世界観についての考察を通じた解放論、特に「世界を止める」「真の明晰さ」などの概念により、私たちの社会・近代を相対化することなどが論じられていました。

コメントやディスカッションでは、著者が提示するマトリックスについて、きれいにまとめられてはいるがわかりにくい、などの指摘がありました。軸(彼岸化、主体化、此岸化、融即化)の立て方などについて一定の議論がありましたが、最終的には、テキストで定期されているのが運動であるという点では参加者の理解が一致したように思います。ただし、その運動のイメージが、私であれば「家の扉を開ける」ことであったり、「島から飛びたつ」ことであったりと、参加者それぞれで多様であった点はたいへん興味深かったです。
また、今回参加された方の中には、大学生時代にこの本にであって人生が変わった、という方々もあり、いまなお多くの人の琴線に触れる見田/真木氏の作品の懐の広さを改めて感じることとなりました。異国での旅を通して体験したことや感じたことを大事にしようとする著者の想いがこの作品に込められて、時代を超えて読者に伝わるのだと思いました。
グローバル化、標準化、モノカルチャー化が進み、自分たちの世界を相対化して捉えること自体がどんどん困難になっています。自分や自分の社会をもう一度見つめ直す機会として、この研究会のような場もますます重要性が増していくのではないかと思います。(塩原)
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