【報告】持続可能な開発のためのハイレベル政治フォーラム2021サイドイベント開催
2021年7月12日(月)の日本時間20:30-22:00に、国連の持続可能な開発に関するハイレベル政治フォーラム2021のサイドイベントとして、「持続可能な開発のための適正な技術選択に関する包括的フレームワーク -ポストパンデミック社会の技術の展望-」が開催されました (主催:認定NPO法人国際協力NGOセンター、共催:特定非営利活動法人APEX、インドネシア大学大学院環境学研究科、The Philippine Rural Reconstruction Movement)。イベントは、オンライン(Zoom)で行われ、世界各国から計49名が参加されました。このイベントは英語で行われました。

まず、このイベントの主催であるJANICの、シニア・アドボカシー・オフィサー堀内葵氏より開会の言葉をいただきました。SDGsを達成する過程で、「どのように」目標を達成するのかにあまり焦点が当てられないことを挙げ、このイベントで、フレームワークを参照しながら、欠けている「どのように」を話し合えることを願う、としてご挨拶いただきました。

最初の講演として、APEX代表理事の田中直から、〈持続可能な開発のための適正な技術選択に関する包括的フレームワーク〉と、その実例として、インドネシアでAPEXが長年取り組んでいる、コミュニティ排水処理事業の紹介がありました。このフレームワークは、2019年12月より発信を続けているものですが、今日の世界が直面している問題を、「貧困・格差の問題」、「環境・資源の問題」、「人間・労働疎外の問題」という3つの側面から掘り下げ、それぞれの問題を緩和・解決していく技術のあり方を10のガイドラインにまとめています。開発途上国の技術選択にも、先進国の技術選択にも適用でき、それに沿って技術選択を行えば、持続可能な開発目標(SDGs)の多くを達成できること、そしてパンデミック後の持続可能な社会形成にも多いに貢献できることが説明されました。

次に、インドネシア大学大学院環境学研究科修士課程長のハヤティ・サリ・ハシブアン氏より、ご発表をいただきました。インドネシアには、1万以上の沿岸集落があり、気候変動や津波、水へのアクセスがないことなどから、パンデミック禍では特に脆弱な状態になっているそうです。そのため、包括的で適正な技術選択が大切であるとし、災害に強い沿岸集落のために、「雨水貯蓄」「洪水の際に浮く竹の家」「クラウドを利用した洪水マップ」「マングローブの保護」等を柱とする技術選択を発表されました。

続いて、最新の技術が最貧困層に与える影響をモニターしているETCグループ(Action Group on Erosion, Technology and Concentration)代表のエレニータ・ダニョ氏にコメントをいただきました。技術選択は、私たちが気づかなくても、環境や政治、経済等に深く影響を与えており、その中でも、SDGsは、その達成に様々な技術が使われることから、技術と切っても切れない関係にあるそうです。そのため、新技術を導入する際には、その影響等を、住民参加の上、前もって評価するべきであると主張され、そのためには、技術を判断するツールが必要だとお話いただきました。〈持続可能な開発のための適正な技術選択に関する包括的フレームワーク〉は、まさにその必要なツールではないかと感じました。

そして、フィリピンで1952年から貧困解消や環境保全のための活動を続けている、PRRM(Philippine Rural Reconstruction Movement、フィリピン農村復興運動)のアドボカシー・開発協力ディレクター、レベッカ・マライ氏より、コメントをいただきました。PRRMは、ハリケーン等の災害時人道支援から、貧しい地域におけるコロナ禍の影響を観察するためのデジタルアンケート調査まで、さまざまな活動をされていますが、その活動の中で、いわゆるローテクでもハイテクでも、人々やコミュニティのニーズを第一に考え、支援される側とともに技術選択をすることを大切にしているとお話しいただきました。

最後に、アフリカ日本協議会国際保健ディレクターの稲場雅紀氏よりコメントをいただきました。コロナ禍での、ワクチンを始めとする技術選択に関する政治や所有権の問題をお話いただきました。コロナのワクチンをめぐっては、税金が使われ、大学などが技術を開発し、試験段階で多くのグローバルサウスの人々の協力を得ているにもかかわらず、その所有権が巨大製薬会社に独占されていることを問題視されました。今後のパンデミックに備えるためにも、技術の管理や所有権をめぐる世界システムの代替案と、適正な技術選択が必要であると強調されました。

パネルディスカッションでは、今後のパンデミックを防ぐことができるような社会システムや、デジタル技術の適正な技術選択について意見が交わされました。
最後に、APEX代表の田中から閉会の言葉がありました。現状の技術選択は、限りない成長と利潤を目指して行われているが、それでは世界の持続不可能性を克服することはできず、人間の福祉と環境との調和を重視したものに、根本的に変わっていかなければならないとして、このイベントを総括しました。
今回は、準備時間がとても短かったのですが、パネリストの皆様を始め、さまざまな方々の助けを借りて、無事終えることができました。ご協力そしてご参加いただいたみなさま、本当にありがとうございました。
(ジェンキンソン 陽(みなみ))
【このイベントの録画】

まず、このイベントの主催であるJANICの、シニア・アドボカシー・オフィサー堀内葵氏より開会の言葉をいただきました。SDGsを達成する過程で、「どのように」目標を達成するのかにあまり焦点が当てられないことを挙げ、このイベントで、フレームワークを参照しながら、欠けている「どのように」を話し合えることを願う、としてご挨拶いただきました。

最初の講演として、APEX代表理事の田中直から、〈持続可能な開発のための適正な技術選択に関する包括的フレームワーク〉と、その実例として、インドネシアでAPEXが長年取り組んでいる、コミュニティ排水処理事業の紹介がありました。このフレームワークは、2019年12月より発信を続けているものですが、今日の世界が直面している問題を、「貧困・格差の問題」、「環境・資源の問題」、「人間・労働疎外の問題」という3つの側面から掘り下げ、それぞれの問題を緩和・解決していく技術のあり方を10のガイドラインにまとめています。開発途上国の技術選択にも、先進国の技術選択にも適用でき、それに沿って技術選択を行えば、持続可能な開発目標(SDGs)の多くを達成できること、そしてパンデミック後の持続可能な社会形成にも多いに貢献できることが説明されました。

次に、インドネシア大学大学院環境学研究科修士課程長のハヤティ・サリ・ハシブアン氏より、ご発表をいただきました。インドネシアには、1万以上の沿岸集落があり、気候変動や津波、水へのアクセスがないことなどから、パンデミック禍では特に脆弱な状態になっているそうです。そのため、包括的で適正な技術選択が大切であるとし、災害に強い沿岸集落のために、「雨水貯蓄」「洪水の際に浮く竹の家」「クラウドを利用した洪水マップ」「マングローブの保護」等を柱とする技術選択を発表されました。

続いて、最新の技術が最貧困層に与える影響をモニターしているETCグループ(Action Group on Erosion, Technology and Concentration)代表のエレニータ・ダニョ氏にコメントをいただきました。技術選択は、私たちが気づかなくても、環境や政治、経済等に深く影響を与えており、その中でも、SDGsは、その達成に様々な技術が使われることから、技術と切っても切れない関係にあるそうです。そのため、新技術を導入する際には、その影響等を、住民参加の上、前もって評価するべきであると主張され、そのためには、技術を判断するツールが必要だとお話いただきました。〈持続可能な開発のための適正な技術選択に関する包括的フレームワーク〉は、まさにその必要なツールではないかと感じました。

そして、フィリピンで1952年から貧困解消や環境保全のための活動を続けている、PRRM(Philippine Rural Reconstruction Movement、フィリピン農村復興運動)のアドボカシー・開発協力ディレクター、レベッカ・マライ氏より、コメントをいただきました。PRRMは、ハリケーン等の災害時人道支援から、貧しい地域におけるコロナ禍の影響を観察するためのデジタルアンケート調査まで、さまざまな活動をされていますが、その活動の中で、いわゆるローテクでもハイテクでも、人々やコミュニティのニーズを第一に考え、支援される側とともに技術選択をすることを大切にしているとお話しいただきました。

最後に、アフリカ日本協議会国際保健ディレクターの稲場雅紀氏よりコメントをいただきました。コロナ禍での、ワクチンを始めとする技術選択に関する政治や所有権の問題をお話いただきました。コロナのワクチンをめぐっては、税金が使われ、大学などが技術を開発し、試験段階で多くのグローバルサウスの人々の協力を得ているにもかかわらず、その所有権が巨大製薬会社に独占されていることを問題視されました。今後のパンデミックに備えるためにも、技術の管理や所有権をめぐる世界システムの代替案と、適正な技術選択が必要であると強調されました。

パネルディスカッションでは、今後のパンデミックを防ぐことができるような社会システムや、デジタル技術の適正な技術選択について意見が交わされました。
最後に、APEX代表の田中から閉会の言葉がありました。現状の技術選択は、限りない成長と利潤を目指して行われているが、それでは世界の持続不可能性を克服することはできず、人間の福祉と環境との調和を重視したものに、根本的に変わっていかなければならないとして、このイベントを総括しました。
今回は、準備時間がとても短かったのですが、パネリストの皆様を始め、さまざまな方々の助けを借りて、無事終えることができました。ご協力そしてご参加いただいたみなさま、本当にありがとうございました。
(ジェンキンソン 陽(みなみ))
【このイベントの録画】
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