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インドネシアを中心に活動を行う特定非営利活動法人 APEXのスタッフ日記です。ここに書かれたことはスタッフの個人的見解であり、APEXの公式見解とは異なる場合があります。

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代替燃料よりも、まず省資源

最近、バイオマス由来のエタノールをそのまま、あるいは加工してガソリンに混合する取り組みが世界各国で行われています。

日本でも、農林水産、経済産業、環境など関係省庁からなる「バイオマス・ニッポン総合戦略推進会議」において、2030年までに年間600万キロリットル(現在のガソリン消費量の約10%)のバイオエタノールを国内で生産する構想がまとめられています。

ガソリンに10%ぐらいまでならエタノールを混合しても、今の自動車でそのまま燃料として使えます。しかし、それ以上にエタノールを入れようとすると、酸性雨の元となるNox(窒素酸化物)やアセトアルデヒド(発がん性物質)などの有害物質が発生したり、配管やタンクなどが腐食したりする懸念があるため、エタノールに対応した自動車を使用しなければなりません。
ところで京都議定書によって、日本は2008年~2012年の間に1990年比で二酸化炭素などの温室効果ガスを6%減らさなければならないと定められています。ところが、2004年における排出量は1990年比で7.4%の増加となっています。
JCCCA Web::全国地球温暖化防止活動推進センターWebサイト - 4-1 日本における温室効果ガス排出量の推移(1990~2004年)

部門別の二酸化炭素排出量を見ると、産業部門に続いて運輸部門が排出量が多く、しかも、その排出量は1990年から2004年までに20%増加しています。
JCCCA Web::全国地球温暖化防止活動推進センターWebサイト - 4-5 日本の部門別二酸化炭素排出量の推移(1990~2004年)

資源エネルギー庁のエネルギー白書2006、第2節 部門別エネルギー消費の動向 【第212-3-1】運輸部門のエネルギー源別消費量の割合によれば、運輸部門のエネルギー消費量は1990年から2004年の間に1990年比で24%増加しています。おおよそ二酸化炭素の排出量の増加と対応していることが分かります。さらに種類別にみていくと、そのうちのガソリン消費量の増加が最も大きくて35%も増加しています。

1990年のガソリン消費量は約4,500万キロリットル、2004年のガソリン消費量は約6,100万キロリットルです。1年で約100万キロリットル増えています(年2%程度の増加)。2005年度までは消費が伸び続けていましたが、2006年度は石油高騰のあおりを受けて、前年度比で1%ほど減ったようです。しかし、今後の動向は不明です。

バイオエタノール600万キロリットルの生産自体が難しいのではないかという話もありますが、まあ生産できたと仮定しましょう。バイオエタノール600万キロリットルをガソリンに添加すると、下の図のように今のガソリン消費量を保った場合でも1990年を基準として22%の消費量の増加、以前のようにガソリン消費量が伸び続けた場合では89%の消費量の増加になってしまいます。
ガソリン消費量

しかし、先ほども述べたように今の自動車のままでは、10%より多くエタノールを混合することは難しいのです。従ってガソリン消費量を減らさなければ、1990年を基準としてガソリン消費によるCO2排出量を6%減らすどころか、22%以下の増加に抑えることも出来ないのです。

このガソリン消費量の増加の背景には、自動車保有台数の増加があります。先ほどの資源エネルギー庁の「エネルギー白書2006 第2節 部門別エネルギー消費の動向」、【第212-3-13】燃料別自動車保有台数の推移を見ると、1990年には4,719万台だったガソリン車保有台数は、2004年には6,526万台になっています。年間平均2.3%の増加率で、人口増加率をはるかにしのぐほどの勢いです。

ところで【第212-3-14】乗用車排気量別構成比の推移のグラフをみると、1990年以降では軽自動車と2000cc以上の大型車が増加しています。ここでも二極化が進行しているようですね。

日本は全国平均で一世帯あたり1.11台(2004年)の乗用車を保有する一方で、自動車をさらに作り続けています。日本は自動車生産量で世界第1位、年間860万台(2002年)の生産量(5分の1のシェア)です。
NationMaster - Statistics > Car production by country

また、日本道路協会発行の世界の道路統計(2005年)によると、自動車千台あたりの高速道路延長および主要幹線道路延長はそれぞれ0.099km、0.823kmであり、アメリカ、ドイツ、イタリア、フランス、中国よりも短いのです。つまり、道路1kmあたりの自動車保有台数が6カ国のなかで最も多い(自動車密度が高い)と言えます。もう十分、自動車はあるのではないでしょうか?

その他の先進国と比べて、1億台キロメートルあたりの事故件数も122件と多いです。1億台キロメートルとは各車両の走行距離の総和で、1万台の自動車がそれぞれ1万km走行した場合に相当します。

このまま自動車保有台数が伸びれば、ガソリン消費量はもっと増え、二酸化炭素排出量も増加するかもしれません。代替案を実行したところで、大量生産・大量消費をやめなければ効果はほとんどないのです。

自動車を降りて、歩いてみてください。自然の美しさがよく見えますから。

(APEX彦坂)
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